南房総市には、「房州低名山(ぼうしゅうひくめいざん)」と呼ばれる低山ながら眺望に優れた山々があります。ご紹介する伊予ヶ岳(いよがたけ)と富山(とみさん)はどちらも一日で登山でき、2つの山を縦走することも可能です。今回は実際の登山ルートに沿って、見どころをご紹介します!
目次
ハイキングも鎖場も体験できる伊予ヶ岳
伊予ヶ岳は前半に登山初心者でも歩きやすい山道、後半に岩肌を鎖やロープをつたって登る鎖場があります。山の中腹にある休憩所の東屋(あずまや)辺りまでは、比較的登りやすい山道が続き、ハイキングを楽しめます。
東屋を超えると、急斜面でロープをつたってのぼるポイントや岩の鎖場があるので、体力に自信がある人向け。鎖場はスリルを味わえますが、滑落事故が起きているので注意が必要です。片道1時間ほどで登れ、山頂では360度パノラマビューの絶景を見られます。
伊予ヶ岳は南房総市にそびえ、関東百名山に数えられる標高336.3mの山です。突き出た岩峰の山頂が特徴的で、千葉県の山のなかで唯一「岳」が山名に付き、その姿から別名「房総のマッターホルン」と呼ばれています。
標高336.3mと低い山ではありますが、急な斜面や鎖場があり、決して気軽に登れる山とは言えません。軽装ではなく、長袖長ズボンと山靴の装備をおすすめします。
登山口から山頂までの様子をご紹介します!
【登山前半】登山口から東屋までのハイキング
伊予ヶ岳(いよがたけ)の登山口は、JR内房線「岩井駅」からバスで十数分のところにあります。最寄りのバス停は市営路線バス富山線の「天神郷」で、バス停から歩いて5分の距離に登山口があります。登山口付近には駐車場(平群天神社の隣「神照寺 観音堂」の前)があるので、車でも来られます。駐車場近くにトイレがあるため、登山前に済ませておくと安心です。
登山口付近には売店やコンビニがないので、登山の途中で食事をしたい場合は予め買っておくのが良いでしょう。車で10分の距離に「道の駅 富楽里とみやま」があり、食事を調達できます。
【道の駅 富楽里とみやま】
〒299-2214千葉県南房総市二部2211
Tel:0470-57-2601
登山口の平群(へぐり)天神社で、無事に登山できるのを祈っても良いでしょう。
【平群天神社】
〒299-2204 千葉県南房総市平久里中207
平群天神社の隣「神照寺 観音堂」の所に車を駐車できます。
いざスタート!
登山口を入ると、最初から少し急な坂がお出迎え。そのまま進むと、四方八方を森林に囲まれるエリアに突入します。
山頂までは迷うことのない一本道。舗装された道路もありますが、老朽化で崩れていたり、根っこが出っ張っていたり、木が倒れていたりするので、常に足元には注意が必要です。
休憩所の東屋に到着
登山口から約30分歩くと、休憩所の東屋に到着。まだ中腹辺りですが、山の周辺を一望できるエリアです。
机と椅子が設置されているので、景色を見ながら食事を摂ることができます。この日は、「道の駅 富楽里とみやま」で購入した太巻き寿司をいただきました。月並みですが、景色を見ながらの食事は格別です!
東屋には屋根がついた場所もあるので、日差しを避けながら涼むこともできます。狭いので、登山者どうしの交流が生まれることも。
【登山後半】鎖場でのロッククライミング体験!
後半は体力が必要な鎖場があるので、ハイキングだけしたい方や体力に自信のない方は、ここで引き返すのがおすすめです。
東屋から少し歩くと、鎖場が待ち受けています。ほぼ直角と言っても過言ではない岩肌が立ちはだかっています。
備え付けの鎖とロープを頼りにロッククライマーになった気分で、両手両足を駆使してよじ登っていきます。高所恐怖症の人は下を見ない方がいいでしょう。恐怖心を振り払いながら登っていきます。
一つの崖を登り終わると、さらに新たな崖が。何度か崖を登り、15分ほどかけて登りきります。
南峰に到着
最後の鎖場から少し歩くと、南峰に到着です!展望スポットでは360度パノラマビューが広がります。近くの富山や、千葉県の最高峰である愛宕山、晴れた日には富士山、箱根の山、伊豆半島も見ることができます。山頂標識の付近には案内図があり、どの方向にどんな山があるかが一目でわかります。開放感のある景色を見たら、登山の疲れが吹き飛ぶこと間違いなしです!
伊予ヶ岳山頂(南峰)からの眺め
伊予ヶ岳には南峰と北峰の2つの山頂が存在します。北峰の方が20m高く、南峰から歩いて5分程度のところにあります。
北峰に到着
北峰の手前でロープがついている斜面がありますが、鎖場ほどの斜面ではありません。
北峰に到着すると、こちらもパノラマビューの絶景が広がっています。南側には先ほど登った南峰が見えます。断崖絶壁を登りきったと思うと、達成感が込み上げてくるはずです!
【伊予ヶ岳】
住所:〒299-2211 千葉県南房総市川上
「富山」で『南総里見八犬伝』のスポットを巡るハイキング!
「富山(とみさん)」は、『南総里見八犬伝』の始まりとなった美しい里山です。標高349.5mで、所要時間3時間半ほどのため、同日に伊予ヶ岳と縦走することもできます。登山の途中には『南総里見八犬伝』にまつわるスポットが点在しているので、巡るのも楽しいでしょう。「富山」のハイキングルートをご紹介します。
「富山」のハイキングルート
「富山」の最寄駅はJR岩井駅です。駅を出ると、早速『南総里見八犬伝』に出てくる「伏姫と八房」の像がお出迎えしてくれます。
伏姫公園
住所:〒299-2226 千葉県県南房総市市部
岩井駅から500m先にある「大蘇鉄」も見どころです。高さ7.5mの大きな蘇鉄で、千葉県の天然記念物に指定されています。
大蘇鉄
住所:南房総市竹内234
さらに近くには、室町時代に建立され、江戸時代に作られた山門が当時のまま現存している「福聚院(ふくじゅいん)」があります。今では珍しい、藩主が来寺したときに駕籠(かご)を置いた「駕籠置台」があり必見です。
福聚院
住所:〒299-2226 千葉県南房総市市部343−1
GoogleMap:https://maps.app.goo.gl/Ntj66xur3q1aneJZA
「富山」の麓には「伏姫と八房」が住んでいたといわれる洞窟、「伏姫籠穴(ふせひめろうけつ)」があり、命を絶った伏姫がここに眠ると言われています。
伏姫籠穴
住所:〒299-2221 千葉県南房総市合戸
登山口近くの「福満寺」を通り、登山スタートです。山道はやや強い勾配と、なだらかな場所が交互に続きます。5合目からはやや急な坂が始まります。
福満寺
住所:〒299-2221 千葉県南房総市合戸569
山頂の少し手前には休憩舎があり、ここからも街を一望できます。
なだらかで歩きやすい階段を上がっていくと、山頂に到着です。展望台があり、登ると岩井の町を一望できます!天気がいいと東京湾の向こうに富士山が見えることもあるのだとか。山頂は広々としており、ベンチもテーブルもあるため、食事も楽しめるでしょう。
【富山】
住所:〒299-2221 千葉県南房総市合戸
サイクリング・飲食・仕事などの複合施設 Heguri Hub(ヘグリハブ)
伊予ヶ岳の麓には、サイクリスト拠点としての機能に加えて、コワーキングスペースや食事処、宿泊機能を備えた複合施設「HEGURI HUB」があります。廃校となった南房総市旧平群保育所をリノベーションしているので、どこか懐かしい雰囲気が漂っています。
周辺はサイクリングに最適な海辺や里山が広がっているので、「HEGURI HUB」で自転車を借りて巡るのがおすすめです。電動自転車から本格的なマウンテンバイクまで色々な種類の自転車を用意しています。
コワーキングスペースは仕事にはもちろん、企業の研修にも使われるのだとか。
広々とした庭は、キャンプとバーベキューにぴったり。周辺に街灯が少ないことから、夜は満天の星が見られます。
各季節に一回、地元の事業者が集うマルシェが開催されます。近くで獲れた農作物や手作りお菓子、ハンドメイド作品、マッサージ、ワークショップなどさまざまな店舗が展開。南房総市の魅力が詰まったイベントです。
【Heguri Hub】
住所:〒299ー2204 千葉県南房総市平久里中224-3
電話番号:0470-58-0312
南房総ハイキングコース
他にもいろいろなハイキングコースを紹介しています。
まとめ
南房総市には低山ながらも登りごたえのある山々があります。今回ご紹介した伊予ヶ岳と富山は、夏はとても暑くなるため、春秋冬に登山するのがおすすめです。どちらも楽な山道ではありませんが、登り切った後の達成感は格別です!
文:吉田櫻子