鮑について
鮑は、古来から南房総の特産品として有名でした。
南房総で採取されている鮑についてみてみましょう。
アワビは、古腹足目ミミガイ科に分類されます。
南房総で採取されているアワビには、クロアワビ、マダカアワビ、メカイアワビ、の3種類があります。また、同じミミガイ科でトコブシという小型のアワビ類も採取しています。
クロアワビ
学名 | Haliotis discus |
英名 | disk abalone |
和名 | 黒鮑 |
別名 | オン、オガイ |
生態 | 殻長15~20cm。足の裏が黒っぽいのでクロアワビという。3種の中では最も浅いところに生息する。夜行性で、昼間は転石の下や岩穴の中に潜んでいる。アラメやカジメのような大型の褐藻を餌としている。殻の大きさは、1年で3.5cmくらい、2年で7cm、3年で9cm、4年で11cmくらいになる。 |
☆旬は夏。刺身で食べるのに最適。
マダカアワビ
学名 | Haliotis madaka |
英名 | giant abalone |
和名 | 真高鮑 |
別名 | マダカ、マタゲエ |
生態 | 日本で最大、世界で2番目に大きくなる種で、殻の大きさが25cm、重さ4kgにもなる。殻が深く、殻表の凹凸も激しい。マタゲエは背の高いという方言である。足の裏は淡黄色。クロアワビ、メカイアワビよりも深いところまで分布しており、潮間帯下から水深50m付近にまで生息している。漁獲量は少なく、千葉県では全アワビの1%程度。 |
☆旬は夏。
メカイアワビ
学名 | Haliotis gigantea |
英名 | siebold’s abalone |
和名 | 女貝鮑 |
別名 | メン、メガイ、メンガイ |
生態 | 他のアワビに比べ殻が浅く、殻の凹凸も少ない。かつては、メカイアワビが雌でオンと呼ばれるクロアワビが雄と考えられていたが、実は別種でそれぞれに雌雄がある。潮間帯から水深30mくらいのところに分布している。定住性があるが真夜中頃餌を食べに歩き回る。老成すると隠れ場所からでてこない個体もおり、孤立した岩にいて流れてくる海藻を頼りに生きているものもいる。 |
☆旬は夏。煮物、蒸し物によいとされる。
トコブシ
学名 | Haliotis diversicolor aquatilis |
英名 | japanese abalone |
和名 | 床伏、常節 |
別名 | ナガレコ、ナガラメ、アナゴ |
生態 | 殻長7cm、殻幅5cmくらいの小型のアワビ類。磯に分布し、潮間帯の岩棚の下などにもいる。足の裏は黄色っぽく、足の側面には長い触覚が多数生えていて運動性に優れている。1年で2.8cm、2年で4.6cm、5~6年で10cm近くになる。 |
☆旬は冬から春。刺身にするには身が薄ので、たいてい殻付きのまま煮物にされる。
平城京の木簡とノシアワビ
アワビは現在でも高価な食材ですが、日本の古代においては、中国の道教思想の影響を受けて薬として扱われるほどの高級食材で、アワビは、神様への捧げ物として使われる他は、主に天皇や貴族の食材として使用されていました。そのため、奈良・平安時代にはアワビは、国家の重要な租税とされ、館山市内や旧白浜町、旧千倉町周辺からアワビは税として都に納められていました。実際に、「塩見」「白浜」「健田」など、安房地域の地名を記したアワビの荷札木簡が、当時の皇居に当たる平城宮や左大臣をつとめた長屋王の邸宅跡などから出土しています。
奈良時代当時、アワビは生のまま、都まで運べませんでした。木簡に記された内容から推測すると、アワビは短冊条に切られ、それを干した「熨斗アワビ」の形で運ばれることが多かったようです。この熨斗アワビは、現在でもご祝儀に使われる「熨斗袋」にその名残を残しています。