南房総 旅の玉手箱

第10回 南総の若き 刀匠とうしょう


刀匠・石井成道の銘が入ったぜいたくな短刀、小刀。
娘の結婚式や、男子誕生の祝いなど贈りものにも人気
 人間の生き方を大ざっぱに分けると2種類あるのでは。一つは食うために生きる人、もう一つは生きるために食う人。どちらを選ぶのも自由だが・・・。
 安房国館山の住人、石井成道氏(42歳)は、大学卒業後、日本刀鍛冶師の道を選んだ。今は亡き父上が、当時家族が心配する中、「いまどきの若い人間で、 やりたい事があるというのはいい事だ」と言ってくれた。

 刀鍛冶の修行は、滋賀県の中川泰天師(74歳)のもとで6年あまりかかった。師一人、弟子一人の修行である。日本刀は、まず熔岩のような「玉鋼たまはがね」のかたまりを松炭で1400度程度に熱し、薄く平らに打ちのばす。準備として炭を一寸角くらいの丁度良い大きさに割るのだが、それだけで“炭切り3年”といわれる。来る日も来る日も、鍛錬所の中で炎と 対峙たいじし鋼を刀に打ち出していく。炎の色を見て火力を判断するために、鍛錬所の中は暗い。やがて炭の炎は爆(は)ぜ、鍛冶師の顔面は赤鬼に変わる。炭の気にも負けない基礎体力がなければ、とても務まる仕事ではない。
 石井氏は現在、館山市北条の自宅の庭に鍛錬所を設け作品をつくっている。 事前に電話を入れれば見学も可能だが、真夏はさけたほうが良い(と取材者思う)。

 歴代の天皇が皇位のしるしとして受けついだ「三種の神器」の一つはつるぎである。刀は 宝物ほうもつなのだ。一般に鍛冶師は鎌倉時代から南北朝あたりの名刀、例えば“岡崎正宗作”などを目標にしているが「正宗のマニュアル」などというものは無い。石井成道氏は、いま刀づくりの壁に当たっているという。そして乗り越えようとしている。
 刀にまつわる言葉も多い。「 切羽詰せっぱつまる」「りが合わない」「元のさやに収まる」「なまくらな人」「付け焼き刃」「しのぎを削る」「目貫き通り」などなど。“目貫”は刀のつかの真中辺りにある 目釘めくぎのこと。鋲頭を装飾的な金物にしてあり、柄の一番目立つ部分から、「目貫通り」という言葉が生まれたとも・・・。


日本刀の元、 玉鋼たまはがね


左手足で 吹子ふいご(送風装置)作動し、右手で刀身を赤らめる。

小鎚や電動ハンマーを使い鋼を打ち出していく。


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