南房総市は、三重県志摩地域と石川県能登地域に次ぐ日本有数の海女文化が根付く地域です。海女は女性を、海士は男性を指し、白浜町だけでも約140名の海女と海士がいます。
白浜町の海女や海士が稼働するのは5月から9月上旬。狙うのは、主に地域の特産であるアワビです。
今回は長年受け継がれる南房総の海女文化について、現役の海女のインタビューと、毎年恒例になっている「南房総白浜海女まつり」のレポートを交えてご紹介します!
目次
現役の海女にインタビュー!「海女の文化を残したい」
歴3年の海女である女性にインタビューさせていただきました。こちらの女性は、子育てがひと段落したタイミングで、「海女になろう」と決意。「白浜町で生まれ、地元の海女に憧れながら育ち、私も将来海女になりたいと思っていました」と語ります。
海女の漁ができるのは5月から9月上旬の限られた期間。漁が解禁されている間も、天候や海の状況により潜水できるかできないかが決まります。漁ができない日は朝7時半頃に港に赤い旗が掲げられ、最長で約2週間潜れない時もあるそうです。さらに、海女の漁は命がけで、「体調が悪い時は絶対に潜らない」と言います。
「あるベテランの海女の先輩に、『毎回潜るタイミングで子どもの顔を思い出しなさい。一回の潜水で何があるかわからないから』と言われたことがあります。それだけ海女の仕事は命がけ。潜水中も無理をすると事故につながる可能性があるので、欲を出しすぎないようにしています」
一回で潜る深さはベテランで5〜7メートル。捕獲するのは、主に南房総の特産のアワビです。ウニやサザエ、トコブシなども獲れますが、単価が安いことから、ベテランはアワビしか獲らないそうです。
白浜町の海女の報酬は獲れ高で決まり、ベテランの中にはたった4ヶ月強で1,000万円も稼ぐ海女も。なんとも夢のあるお話です。
白浜町の海女たちは朝9時半頃から潜り始め、各々のタイミングで引き上げます。インタビューした女性は9時半から12時頃までずっと潜り続けるそうです。海女によっては、海女小屋で休息を取った後に、14時頃まで潜る方も。漁の後は、捕獲したものを漁港に持っていきます。「私はまだ全然獲れません。1日に4,5個がやっと。ベテランのなかは一日で何十個も獲って、一回で数十万円稼ぐ方もいらっしゃいます」
海女が着る服は地域によって異なります。白浜町の海女は上下に分かれたウエットスーツにオレンジの上着を着用。オレンジ色の上着を身につけてると目立つので、船との衝突を防ぐ効果があると言います。
白浜町の海女・海士たちの年齢は30〜90代。年々高齢化が進み、海女・海士の人口も減ってきています。「生まれ育ち、とても愛着がある白浜町。この資源である海女・海士を今後も残していきたいと思っています」
海女・海士に憧れて県外から地域おこし協力隊に参加!
南房総市で海女・海士になるべく、県外から地域おこし協力隊に参加した3名にインタビューしました。最初のメンバーが地域おこし協力隊になったのは約2年前。元の仕事はIT系や出版、飲食などさまざまなバックグラウンドを持っています。
福留さん「私は地方移住がしたくて色々な場所を見てまわっているなかで、南房総市に惹かれて地域おこし協力隊に参加しました。海がある町で育ったので、海に囲まれた南房総市に惹かれたんだと思います」
小川さん「子どもの頃から海が好きで、将来潜る仕事がしたいとずっと思っていました。自分の身一つで仕事するのがとてもかっこいいなと。夢を叶えられる場所を日本中探し、海女になれそうだったのが南房総市だけだったんです。チャンスをつかむために、来ました」
岡村さん「小さい頃からモリで魚を獲るのが好きでした。会社員として勤めていたものの、小さい頃からの憧れを追いかけ、海士になれる場所を探して、ここに来ました」
海女になるには地域に3年間の定住を経て、漁業協同組合に加入しなくてはいけません。現在3人は要件を満たしていないため、漁協の手伝いとして働き、漁師や海女が捕獲した魚介類の選別や買取などを行っています。
南房総市に移住し、「歓迎されているのを感じて、楽しい」と語ります。海女・海士の地域おこし協力隊で参加した3人が全員定着していることが、居心地の良さを語っているのかもしれません。
一方で、福留さんは海女・海士の地域おこし協力隊の第一号として参加した難しさも感じているのだとか。「当初は受け入れる側は、地域おこし協力隊にどう対応したらいいか分からなかったと思います。私としても、先輩がいないので将来について手探りで進めている状況です。その都度地域の方と話し合いながら進めています」
漁協に加入した後も、海女・海士として十分な捕獲ができるようになるまでは少なくても3年かかると言われています。加えて、海女・海士は専業で生計を立てている人は少なく、多くの人が別の漁業や農業などと兼業で行っており、3人も例に漏れず兼業の仕事を探す必要があるそうです。
小川さん「まずは海女になるのが目標です。昔から憧れていた海女という職業を無くしたくないという気持ちがあります。海女の人口を増やすことに貢献したいです」